ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

生かされる

おとといは静かだった義母、きのうは「発狂」状態でした。「情動の変動が激しい」レビーの特徴がもろに出ています。ブプロピオン(抗鬱剤)が効いているのかギャーと喚くことはありませんが、部屋で一人でベラベラ喋っていて誰も返事をしないと「返事をしろ!」大きな声で叫んだりしていました。

あまりのことに相棒がフロアの看護婦に尋ねると、義母が朝からおかしかったので、センターの一般医が抗不安薬のアティバンを義母に与えたと言うのです。義母の場合「ブプロピオン服用中にアティバンを与えれば発狂状態になり得る」というセンターの神経科医の診断書がありました。それをこの一般医は読んだはずです。相棒は憤慨して「この一般医の指示は無視し、神経科医と精神科医の指示に従ってくれ。この一般医を母親に近づけないでくれ」と看護婦に伝えました。

「歯を磨きたい」と義母が言い出したのですが、洗面所まで歩くことが出来ないので、私は洗面器を義母のひざに置いて、歯ブラシを渡しました。義母は歯を磨いて濯ぎ、入れ歯を取り出して洗っていました。その間、洗面器を支えながらコップの水を入れ歯にかけている私に向かって、義母は絶えず訳の分からないことを喋っていました。介護人が義母の歯を毎日磨いてくれていると思っていた私ですが、見当違いのようでした。相棒は自分の母親の狂気の姿を直視することが出来ず、早々に引き上げることにしました。

義母は狂気の沙汰、相棒はやぶ医者に激怒、きのう私は自分の気持が分からなくなっていました。医者は自分の知識の範囲内で手探りで治療します。だからやぶ医者の場合、患者は薬のモルモットになってしまうことが多いです。義母を見ていてそう思いました。老いて、お金がないと、こんな扱いをされてしまうんだ、と切ない気持になりました。義母はまだ相棒と私がいるので救われていますが、独りぼっちの老人は、いい加減な扱いを受けて終止符をうつケースが多いのだろうと思いました。長生きしても最後にこんな生き方、いや「生かされ方」では惨め過ぎます。