ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

誰もいない?

昨日の義母は怒っていました。私がドアの近くに来ると、怒鳴り声が聞こえます。「なんだ、こんな不味いもん、食えるか!タマネギのオムレツを持ってこい!」と乱暴にもプレートを引っくり返えそうとしていました。「ここは安いものしか出さない。料理の作り方も知らん、バカばかりだ...」と、食事を運んでくれた罪のない人に暴言を吐きます。呆れ顔のその女性に私は申し訳なくて「すみません、すみません」と謝るばかり。痴呆症だと分かっていても、腹の立つこというオッカサンです。

義母は私の顔を見るなり「タマネギのオムレツだよ」と言うので「タマネギも卵もないから作れません」と言うと「こんな簡単なものが作れないのか!タマネギも卵も冷蔵庫にあるじゃないか」と義母。チキンスープは出されたものを飲んでいたようです。「スープ、まだ飲みますか?」と訊くと、義母は「もういい」というので、ハラという卵パンをトーストし、ポテトパンケーキを温めて持って行くと、義母の気持は少し落ち着きました。

「キュウリのピクルス」と「ストロベリーシロップ」と、毎日唱えていた義母なので、買ってきました。ピクルスを渡すと喜んで食べていました。そのあと、アイスクリームに待望のストロベリーシロップをたっぷりかけて食べる義母は、きっと記憶も嗜好も子供の頃にかえってしまったのでしょう。そのあと、また「ないものねだり」が始まり、「チョコレートシロップ」と言い始めました。甘いものなど食べなかった老人が甘いものを好むようになるのは死期が近いことを暗示しているのかも知れません。しかし、目の前の義母は大変元気です。

義母の弟から電話がかかってきました。義母は弟に「誰も来ない。弟も来ない。息子も来ない。誰もいない。誰も私のことなんか構わないんだ」と文句タラタラ。「誰も来ないって、オッカサンよ、ここでお前さんの入れ歯洗っている私は何なんだい」と言いたくなりました。義母にとって私は部屋の什器備品みたいなもの。ないと困るけど、あるとそこにあるのが普通なので見過ごすもの、それが私です(笑)。