ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

義理の娘と同じ名前

バターをペロペロ舐めて容器を空にしてしまう義母。カロリー満点。こりゃ100歳以上の長生きするかも、などと思うこともありました。ところが、一昨日、また尿道炎を起こして入院となりました。寝たきりでオムツをしているので仕方がないとは思うのですが、入院事態になるのはこれで三度目。この養護施設のオムツの取換えの間が長過ぎるのでは、とつい疑ってしまいます。義母は何も言わない、というより、もう感じなくなっているらしいのですが、炎症を起こすと心臓が反応し、胸に埋め込んである除細動器が大きく作動します。今回、係りの医師がその大きな作動に気が付き、入院となりました。除細動器のデータでは、かなりの頻度で調整作動がみられ、その度、義母はこの除細動器に命を助けられているということが分かります。

入院を繰り返す度、義母は人間というより人間の形をした生き物のようになってしまいます。ベッドの上に居る自分が何でここにいるのか、今が何年何月何日の何時なのか、何も分からなくなってしまうのです。ボーッとした顔であちこち眺めていた義母は、ゴワゴワに固くなった手の指でポータブルテーブルの上にあるチリ紙の入った箱を取上げようとします。やっと箱を手に取った義母は、ジーッと箱を見つめ、これが何であるか理解しようとしている様子がありました。しばらくそうしていましたが、それでも何か分からないらしく、またポトンと箱を元に戻していました。

私が「それじゃ帰ります」と言うと、義母はニコニコして「あー、あんたの名前は?」と訊くので「ミエコです」と言うと「あぁ、私の義理の娘と同じ名前だ」と義母は屈託のない顔で言うのです。私を介護人だと思っているようです。私がニコッとして出て行こうとすると、義母は「チョット待って、今ミエコを呼ぶから」と私の名前を呼び始めました。義理の娘が反対側に居ると思っているのです。同じ名前の人がいるから会ってごらん、というわけです。苦笑いしながら私が「私がミエコですよ」と言うと、義母は「ああ」というような顔をしましたが、結局よく分からなくていたようです。