ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

悲しい義母

4回目の尿道炎で入院している義母ですが、炎症を起こす菌が突然変異で強くなり従来の抗生物質が効かないらしく、別の経口剤にするか点滴にするか、病院でも手こずっているようです。見舞いに行くと、菌に感染しないよう、部屋に入る前に割烹着のようなカバーを被らなければなりません。部屋を出たり入ったりするには、いちいちカバーを脱いで出て、入る時また新しいカバーを被らなければなりません。

3回目の入院の時、義母が感染する菌を持っていると分かるまでの間に何度も手を握ったり、髪にキスしたりした私は、強烈な鼻腔炎になってしまったので、今回は義母に触らないようにしています。義母はそういう私を恨めしそうな顔で見ます。義母は手を握ったり抱擁したりするのが好きな人なのです。

普通は怒鳴る義母ですが鎮静剤を飲まされて静かにさせられています。私たちを見ると「喉が渇く」「ここの水が不味い」「何でも不味い」と不満を言い出しますが、鎮静剤のため声が弱いので助かります。最近のニューヨークの水道の水は、カビ臭くて飲めないと私も思っていますので、義母の不満も分からないではありません。

そこで次の日、ボトルの水を買っていったら、最初は飲んでいた義母ですが、途中で入れ歯を嵌め、その入れ歯が浸けてあった溶液が口に残ったようで、水が不味くなり「この水は不味い」「セルツァー(発泡水)の方がよかった」「熱いお茶が飲みたい」と始まりました。

いちいちカバーを脱いだり被ったりすることに抵抗があった相棒ですが、母親のあまりにうるさい注文に外へでて、夜勤の看護婦さんにお茶がある場所を訊きに行き、カップがないので探したり、キッチンがロックされているので開けてもらったりして、30分ほどしてやっとお茶を持って戻ってきました。義母は「熱すぎる」というので水を足してあげると、今度は「砂糖はないのか」っと始まりました(笑)。砂糖など入れて飲む人ではなかったので相棒もつい気がつかなかったようですが、いちいち要求をきいていられないので、砂糖、砂糖と静かに騒ぐ義母を無視しなければなりませんでした。

次の日に行くと、義母は眠っていましたが、口をガバッと開けていました。これでは口の中も渇くはずです。ベッドの頭の方を45度ほど上げると義母の口が閉じました。あとで看護婦さんに話して、義母の就眠時はベッドを起こした状態にしておくよう頼みました。目覚めて私たちを見ると、途端に不平不満を言い始める義母です。それが私たちの居心地を悪くすることが分かりません。義母をみていると人間の悲しさがのしかかってくるような気持になります。