ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

秋晴れの夕方

NY、昨日も今日も秋晴れでした。きのうの日曜日は夕方近くに相棒と一緒にセントラルパークへ散歩に出かけました。天気の良い日、パークは夕方でも人が大勢出ています。

少し北へ歩いてタートルポンドまで来ると、芝生の上に、空中でキラキラ翻っている数本の細長い銀色のテープが見えました。その動きはまるで鯉のぼりのようです。不思議なことに糸の先には何も見えず、まるで手品のように浮き上がって風に靡(なび)いていました。

凧揚げの主は?と探すと、芝生にある岩に腰掛けた老人が下を向いて、ゆっくり、ゆっくり、釣り糸を解くような仕草をしていました。そして銀色のテープも老人のペースに合わせて、ゆっくりゆっくり上がって行きます。上がっていく先には糸のほか何も見えません。しばらくはマジックを観るような気持で見ていました。

その時、相棒が突然、「あ、あれだ!」と天を指差しました。エッと、その指先を見ましたが何も見えません。よくよく見ると、遥か彼方の空遠く…幸い住むと人の言う(笑)…じゃなくて、雲の高さに凧がキラリと光って見えました。「ウワァー!」と声を上げると、老人がこちらを見て「面白いかい?カイトアートと言うんだよ」と教えてくれました。相棒が「いったいどのくらいの高さなんですか?」と訊くと「今400ヤード(366m)だ」と老人がリールの目盛を見て答えました。「すごいなぁ!コレ、あなたが発明したんですか?」と訊くと、老人は横目で少しはにかんだ様子で「ま、そんなようなもんだ」と答えました。

かなりインパクトのある光景でビデオに収めたかったですが、カメラを持ってこなかったのが本当に残念でした。だいたいの様子をちょっと手描きしてみましたが、銀色のテープや細くて見えない糸などうまく表せません。

そこから離れがたくていると、近くで犬を遊ばせていた車イスに乗ったお婆さんが「ちょっと、あなた、その犬を私のヒザに乗せてくれませんか」と言うのです。それで犬を抱こうとして後を追うと犬は私を避けてしまいます。お婆さんは「抱かなくていいの。ただそこに立って犬が動くのを止めてくれればいいのよ」と言うのでそうすると、犬はお婆さんの前に止まり、漸く意向がのめたらしく、お婆さんのヒザに乗っかりました。お婆さんはサンキューと言ってくれましたが、私は特に何もしなかったような気になりました。

犬がお婆さんのヒザに乗ったのを切り目に、凧の老人にサンキューと言ってソコを離れました。私たちが離れたあと、数人の人たちが老人に近寄っていきました。
そのまま東へ向かって歩くと、五番街の79丁目に出ました。(続く)

[後記] この凧揚げの老人、もしかしたらYouTubeにあるかも知れないと思って探したら「セントラルパークのカイトマン」というTubeが見つかり、フランクロドリゲスという人だと分かりました。
http://www.youtube.com/watch?v=eLlvszT3-Ww
このYouTubeに映っているフランクさんの凧はごく普通の感じですが、昨日見た凧はまさにマジカルカイト、宇宙的でした。