ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

オリビア(3)

次の日の午後、車で1時間ほどのホテルの温泉に浸かり、そのホテルのレストランで結婚記念日の夕食をしたのでジンジャーブレッドには行きませんでした。もしかしたらオリビアは私たちを待っていたかも知れません。

その次の日、夕食は車で5分ほどの小さな町にあるMoya’sというピザ屋へ行きました。野菜だけのビーガンピザを作ってもらいましたが、その美味しいことといったらありませんでした。その日はジンジャーブレッドが閉まっていて、オリビアは退屈して私たちのビラに来たかも知れないといまさら思いました。

次の日は大晦日でジンジャーブレッドも町のお店も殆どが閉まるとDanさんから聞きました。Danさんは町から15分ぐらいの湖の畔にあるドイツ料理屋が開いているのでと、そこに夕食の予約を入れてくれました。ドイツ料理でビーガンは無理だろうと思うでしょうが、物凄く美味しいキュウリの薄切りサラダと完熟トマトのサラダ、スイス風ポテトパンケーキ、野菜パスタ、ミックスフルーツで何とかなりましたぞ。

そしてビラに戻って扉を開けたら、何だかスルッと扉から入って来るものがありました。オリビアでした。客の部屋に入ってはいけないと躾けられていると思うのですが、平気で入ってきて、さっさとリビングルームに座りました。私と相棒がテラスに出てオリビアを呼ぶのですが全く無視されました。扉を開けて「オリビア、テラスでお話しようよ、ね、ホラ、出てきてちょうだい」と言っても「いやぁよ。ワタシは出ないわよ」ってな目付きをします。

しばらくテラスで話していた私と相棒が部屋に入っていくとオリビアは手を舐めてきたり、ひっくり返ってお腹を出して、とても甘えん坊な態度です。それでも何かガンコに外へ出ようとしません。大晦日を私たちと一緒に過ごそうとしているのです。相棒はもう嬉しくて胸いっぱいになってオリビアを撫でています。しばらくオリビアと一緒にリビングルームにいましたが、私たちは寝ることにし、ベッドルームに続くドアを閉めました。でもオリビアがいつでも出ていけるようにリビングルームの入口は網戸だけにして扉は開けておきました。

翌朝、リビングルームへ行くとオリビアはまだそこに居ました。トイレに行かなくていいのかな、お腹空いてないのかな、と心配になりました。部屋には食べ物がないので、お水を皿に入れてあげるとオリビアは美味しそうにペロペロ飲んでいました。網戸を開けると、今度はオリビアは外に出ました。出ましたがテラスに座っています。私たちが仕度をして朝食のためにダイニングに行こうとすると、オリビアが一緒についてきました。私たちの仕度が出来るまで待っていたのです。オリビアの犬小屋は朝食ダイニングエリアのテラスの横にあります。湖が眺め下ろせるとても景色のよいところです。待っていた客の子供たちがオリビアに餌を上げていました。オリビアが大晦日と元旦を私たちと過ごしたことはDanさんには内緒にしておきました。オリビアが部屋に入り込んだなんてこと、言わない言わない(笑)。

さて元旦の次の日は私たちの帰る日です。朝食を終えてビラに戻ると、下の方から丘の上の私たちを見上げるオリビアがいました。「あー、オリビアー!!」と言って私が半円を描くように大きく両手を振ると、オリビアは丘の上まで駆け上がって来てくれました。そしてオリビアは、これから私たちが帰ることを承知しているようでした。テラスの端に座って下を見ています。そこから私たちの車が見えるのです。私たちの帰りをそこから見送ってくれるつもりなのでしょう。

最後に私たち3人(2人と1匹)一緒の写真を撮ろうと思い、セルフタイマーをセットしました。横を向いていたオリビアはセルフタイマーがジージー音を出すとカメラの方を向いてくれました。とっても利口な犬でした。