ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

不幸中の幸い

2、3日前、植木鉢の中を覗いたら、こんな芽が出ていました。セントルシアのアーモンドを埋めたのは3ヶ月ぐらい前。植木鉢を日当たりのよい高さに変えたら嬉しくなって芽を出したようです。


さて、今週末は二日続けて少し慌てることがありました。

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土曜日、Cutting Roomに再びJimmy Webbが来ると聞いて相棒がチケットを買っておいてくれました。

Cutting Roomの着席サービスはかなり鷹揚で、たいした列の長さでなくても時間がかかります。そして今回、席はよいところに座ったのですが、知らない老カップルが目の前にいる相席になってしまい、ちょっと戸惑いました。私も相棒もかなり人見知りする方なので、自己紹介して挨拶するという大人のマナーが身についておらず、挨拶をしそこなって目の置きどころがなくて困りました。社交マナーについては全く成長できない自分に恥ています。

さて、Webbの話術はとても自然で楽しく、歌の合間の笑いが絶えず、Webbと客席が一体となってとても楽しい時間を過ごしました。♪All I Know♪を歌う前には「アーティ(アート・ガーフォンケル)が客席にきている」というのでビックリ。中二階の席にいたガーフォンケルが立って何か声援を送ってきました。一曲歌ってくれるかなと思ったのですが、そこまで望むのは無理というもの。Webbはお気に入りのガーフォンケルに今でも曲を作っているようです。

さて、そこまではよかったのですが、問題はウェイトレスがビル(勘定書)を持ってきた時から始まります。同席した老夫婦の夫人が食べていたモノが書かれていたビルを貰った相棒は「あなた方のビルだと思います」と言ってそれを老夫婦に渡しました。もうカードを渡して精算しサインをするばかりになっていた老夫婦のご主人は、コピーを含めた2組の4枚のビルがゴチャゴチャになってしまって困惑し迷惑そうにしていました。

悪いことにそのご主人がサインをするためのボールペンが暗いテーブルの下に落ちてしまったようで見つかりません。慣れない若いウェイトレスはなかなかやってこないので、早く帰りたいらしいご主人は少しイライラしてきました。私が「ビルが間違っていないか確かめてからサインされたほうが...」と言うと「もう金額なんかどうでもいいんだ」とご主人は怒り出しました。それで私のボールペンを貸してあげると、すぐさまサインしてさっさと帰っていってしまいました。どうもこのご主人、私たちのせいでビルがメチャクチャになったと思ったようです。夫人の方は悪いと思ったのか、私の方をみて「あなたの髪の毛、多くてステキねぇ」と少し心を和らげる声をかけてくれてから帰りました。私はここでマナーを学びました。相手の気持を和らげるためには、どんな些細なことでも何か褒めるところを見つけてそれを言うこと。今回、この夫人の言葉が、老夫婦を怒らせてしまったと思って気が重くなっていた私の気持をどんなに軽くしてくれたか分かりません。
やっと正しく直したビルを持ってウェイトレスがやってきたので、相棒はビルにカードを挟んで彼女に渡しました。5分ほどして彼女が戻ってきて「あのう、カードをいただきましたよね」というのです。ビルを開けてみるとカードがありません。この暗い部屋のテーブルの陰に落としたとしたら、探すのは大変です。その若いウェイトレスは5、6冊のビルを抱え込んで、手には4、5枚のクレジッドカートを握っています。その格好がとても心もとなく、この子は大丈夫なんだろうかと私はオロオロしてきました。とても一所懸命なのだけれど、慣れない上にあまりにたくさん一度に精算しなければならなくて、その子は気が転倒しているように見えました。私の孫娘ぐらいの年の、若くてきれいな女の子です。私の孫だったらと思うと可哀相になってきて、一緒になってアチコチカードを探しました。

そのウェイトレスも同じところをもう一度探していました。すると別のテーブルの下に落ちていたらしく、「あ、ありました」っと手を上げて見せたので、私もホッとしました。そしてその子が「長く辛抱強く待っていただいて、ありがとうございます」と言うので「忙しくて大変だものね」というと「でも、あの、ショーは楽しんでいただけましたか?」と訊く殊勝な心のウェイトレスでした。「ええ、もちろん」と答えると嬉しそうな笑顔を見せました。こんな女の子がNY市に居たかと驚きました。郊外では優しい心のウェイトレスに会いますが、市内で出あうのは珍しいことなのです。この若い女の子がこれから先うまく行きますようにと願わずにいられませんでした。

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そして翌日の日曜日、秋分の日、故義母の誕生日でもあるので、ロングアイランドまで相棒の両親の墓参りに出かけました。

行く道はいつも混み、車で1時間半から2時間かかってしまいます。それでいつも墓地の閉まる時間に着いてしまいます。門はしばらく開いているので、いつも平気で入って行きます。

この日も閉まる時刻に入って行き、相棒の両親のお墓と叔母夫婦2組のお墓にお参りしていると30分以上経過していました。そして出口まで行くと門は閉まっていましたが、いつものように誰かが開けてくれるだろうとタカを括っていました。ところが誰も来ないので、仕方なく墓地の管理事務所へ戻ってみると、事務所のドアも閉まっていてもう誰もいません。

しばらく、クラクションを鳴らしたり、あちこちのドアを叩いてみたりしてまた30分ほど過ぎました。墓地はシーンとしています。相棒は墓地の事務所に電話してみましたが、もちろん誰も電話口に出ません。「こりゃあ、警察を呼ぶしかないかなぁ」と呟く相棒に、私は「そんな大げさな」と初めは思いました。

しばらく、またあちこちのドアを覗いたり叩いたりしていたら、5時半ごろ管理のトラックがやってきました。管理人から「あんたたち、墓地は4時半に閉まるんだよ」と言われ「たまたま工事のトラックを入れなきゃならなくて私がやって来たから、あんたがたラッキーだったけど、もし私に用事がなくて来なかったら閉じ込められて出られなかったね。そしたら警察を呼ぶしかなかったんだよ」と言われてしまいました。

警察なんてモノ騒がせだと思う私ですが、相棒は翌日仕事があるので警察に連絡して出してもらうしかなかったでしょう。チョット引っ込み思案の私だけだったら、警察は呼ばず、お墓で朝まで明かしたかも知れません。

なんにせよ、日曜日は管理人が来てくれてラッキーでしたし、土曜日はカードが見つかってラッキーでした。不幸中の幸い。