いつだったか、20年か30年ぐらい前だったか、日本に帰った時、実家の台所にとても良い感じの丸い俎(まな)板がありました。あまりに感じがいいので「これ、ちょうだいっ」と言って、母の返事もそこそこに私はサッサと米国へ持って帰ってきてしまったのです。母は私に呉れたくなかったかも知れません(笑)。
今もその俎板を使っています。大きさも手ごろで使い心地は抜群。最初の頃は檜のいい匂いがしていましたが、今は使い込んで表面はすり減り、少し黒ずんだ部分も出てきています。たまに漂白剤で洗いますが、いつもは水で濯いで包丁で水気を切るだけ。いまだにいい感じの質感です。
最近になって気が付いたのは木端の所に木曾檜 魚菜誂と焼き印があること。そして気をつけて見ると継ぎ目のない一枚板です。今頃この俎板の希少なことに気が付きました。贅沢な俎板を平気でぞんざいに使っていた自分の無神経さに我ながら呆れます。