芙蓉の思い出

昔、目蒲線の目黒駅近くの社宅に住んでいた頃です。60年近く前になるかな。

一階の台所の窓の下の陽に当たって妙に白々しいコンクリートの壁に美しい大輪の花を見つけました。一本だけの茎は花の美しさに似合わず凄く太く、葉は大きく、凛としていた、と記憶します。
何でこんなに綺麗な花が種も植えないのに咲きだしたんだろうと子供の私は不思議でしようがありませんでした。そして母に花の名前を訊いたのです。「何だろねぇ。芙蓉かな」と母は言いました。母は野の草花のことは知っていたようです。
私が「きれいだなぁ」と喜んでいる様子をみて、人の幸せな顔が嫌いな母は「すごく増えるんだよ。頑固で引き抜きにくくなる」と言ったような気がします。確かに茎がず太い。そこだけまるで私みたいで親近感を覚えたのでしょうか。
私はこの花が増えるのを楽しみにしていたような気がします。確か、2本か3本に増えたような気がしますが、これも記憶違いかも知れません。
四季のある日本の花らしくない、艶やかなピンクの大輪。今思えば、ハイビスカスと同科なので元は南国の花なのだろうと思います。最近になってタチアオイとかムクゲという似ている花のことを知り、昔見た芙蓉の花を思い出した次第です。