ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

30年前の旅の思い出

前にも紹介したビデオ『ストラスバーグの美しい女性の歌』です。風になびく女性の髪、風の中で歌う雰囲気が好きで、時々聴いています。ストラスバーグは私の思い出の場所でもあります。私が米国から初めての国外(フランス)の旅をした時の目的地でした。ドイツとの国境近くのフランスの小さな町です。

今から30年ほど前 (その頃私はテキサス州ヒューストンに住んでいました) 何の本か忘れましたが、ある本を眺めていて、そこにあった一枚の写真に私の目が釘付けになりました。石垣の川縁(かわべり)にあるハーフテインバー(アルサイス風)の家の壁が、無性に懐かしいのです。もちろん行ったことも見たこともない所です。白壁に焦茶の木材を縦横斜めに填めてある、その雰囲気がなぜかとても好きな私です。写真のキャプションには『ストラスバーグ』とだけ書いてありました。詳しい住所などありませんでしたが、もう、そこへ行ってみたくてたまらなくなりました。それで近くの図書館へ行って、安いフランスの旅をする方法が書いてある本を読みました。

アイスランド航空のチケットが一番易いと書いてありました。アイスランドの主都レイキャビク経由でルクセンブルグまで飛び、そこから列車でパリまで行き、そこから先はまた列車の旅という方法でした。レイキャビクの空港ではちょっと買物しました。母の土産にウールのショールを買ったのですが、地味過ぎて、あとで母はあまり喜びませんでした。せっかくのアイスランド土産だったけど、母はソレ捨てちゃったんじゃないかなあ(笑)。

ルクセンブルグの空港からタクシーで列車の駅まで行ったのですが、そのタクシーが黒塗りのマルセデス! 列車が来るまで時間があったので、その辺をブラブラして石橋の近くまで歩くと、可愛いパン屋さんがありました。丸っこいパンを2つほど買いました。あの頃のドルに換算すると一個5¢ぐらいで、あまり安いので驚いたほどです。石橋から目の下を眺めると、緑色の芝生におおわれた土手が丘のように美しく、その先に幼稚園のようなカラフルな可愛い建物があって、まるで絵本の中にいるようでした。いつまでもじっとそこで眺めていたい気持になりました。

駅からどのようにして列車に乗ったか全く記憶にありませんが、何とかパリの駅に着いたようです(笑)。ルーブル美術館の辺りを歩いていたら、見映えのしない男が寄ってきてパリを案内すると言うのです。ハハー、こういうのがアジア人の女性が一人でいると寄ってくるハエのような男なんだろなあと思った私は何度も断りましたが、断わり方が優し過ぎたのか、しつこく追いてきます。あまりしつこいので、頭にきた私は声をきつくして『 ついてくるな! シッシッ、あっちへ行け!』とハエを追い払う要領で追い返しましたら、呆気にとられたような顔して、やっと諦めたようでした。なんでああもみすぼらしい男が寄って来るもんだろうか。私も見下げられたものだとがっかり。安っぽいブラウスとチョッキにコ汚いジーンズをはいてる自分の身なりも考えず、そう思ったものです(笑)。

パリは雨でした。濡れながらバスに乗り、有名な何とかガーデン(有名なのに忘れた(笑))を見に行くつもりでしたが、バスを降りてから雨の中、先が見えず、どちらへ行ったらいいか分からなくて、仕方なく近くのパン屋でクロワッサンを10個買って、帰りのバスに乗りました。すると往きと同じ バスだったようで、運転手さんもビショ濡れの私を可哀想に思ってくれたのか、切符の買い方と入れ方を教えてくれました。次の日も雨。ビショビショになりならがエッフェル塔の近くまで行きましたが、雨足が強いのでまたホテルへ引き返しました。晴れたら街を見物しようとホテルで雨の止むのを待っていたけれど、目的地はパリでなくストラスバーグなので、パリ見物を諦めて三日目 (四日目だっかかも) にホテルをチエックアウトしました。すると急に晴れてしまいました(笑)。

雨の日、ホテルで何してたかというとクロワッサンを食べながらテレビを観てました。『アリババの40人の盗賊』のコメディを観てました。仏語は分からないけれどアリババの話は知っているので何となく分かったような気になりました。ケスク-テユ-フェー?というのが『お前何やってんだ?』と言うのだと分かりました(笑)。この旅で憶えたフランス語は2つ、お勘定= ラデイッション、返事のハイ= ダッコー(笑)。この後、列車で南へ下りディジョンで泊まり、マルセイユまで行きました。パリでは自動車にぶつけられたこと、列車を間違ってスペインまで行ってしまい慌てて戻ったことなど色々ありますが、長くなり過ぎたので、この辺でおしまい。

肝心のストラスバーグに行きついたのかね?とお思いの方が多いでしょうね。行き着きました。そして町をぶらついている内に、例の写真の場所についたのです!! 自分でも驚きました。住所もなくて知らない町の一角にたどり着くことができたのですから。家だと思っていたのは川沿いのステキなレストランでした。ストラスバーグが焼物の町であることさえ知らずにいた私。この時の旅は、ただ『行った』ことだけの旅でした。今度行く時はもっと充実した旅にしたいと思っています。(左の写真は私が撮ったものではありませんが、ストラスバーグのハーフテインバーの家々の特徴がよく出ているので、ご参考までに貼つけました)