ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

誤解の中で生きる

あまりに自己中心のため、自分を第三者として少し離れて観ることが出来ず、自分のやる事考える事が傍目から見たらどうなのか分からずにいる場合、そのまま分からずに一生を終える人は、幸せなんでしょうか?

義母のことですが、きのう、少し悲しくなってしまったのです。義母はなぜか私を倹約家だと見做していて「高くても 良い物(本物)を買うべきだ」と常に言っていたのです。

義母が残していったモノの処分をするのに、きのうバイヤーに来てもらいました。シルクスクリーンだと思っていた、あの大きな屏風は贋物で、パーチメントペーパーに描かれたものだそうです。象牙だと思っていた中国人形二体はプラスチック、ミンクだと思っていた毛皮はマスクレットという似たような別の動物のものらしいのです。しかし、領収書が残っていて、そこにはミンクと書かれているのです。悪い売手に騙されたのでしょうか。

二体の人形の裏には「牙司」と中国語で彫られていたので、これが象牙を意味するのだと私は思い込んでいました。私が「象牙だと思っていたのにぃ」とあまりがっかりした様子を見せたので、バイヤーがプラスチックであることを証明するために、熱した針を突き刺して見せてくれました。

義母は買ったものが本物だと思っていたのでしょうか。本物でなくても価値あるものだと思っていたのでしょうか。コートはミンクだと疑わずにいました。義母は、なんだか贋物の世界で一生を終えたような気がして、悲しくなりました。しかし、人間世界は皆が勝手に誤解して暮らしているようなものだから、それでいいのかなぁ...。私もたくさん誤解していることでしょう。でも、真実とか本物とかを追究するのは、非常に面倒だし、時間のかかることだし、楽しく生きる時間が少なくなるから、これでいいのかなぁ...。

さて、可笑しかったのは、古い古いボロボロのスーツケースを見て「こりやぁいい!」とバイヤーが喜んだことです。玄人の見る眼は、やはり素人とは違うようです。ボロボロのチェロも持って行きました。使えないチェロですがお店のデコレーション用になるそうです。私たちが捨てなければいけないと思っていた義父の古い持物の方が喜ばれました。

余談ですが、義父は読書家だったので、書籍の量が凄いです。ほとんどが歴史の本やら辞書やらで、かなり厚ぼったい本ばかり。たまにマークトウェインのハードカバーなどもあって、いい雰囲気です。私は本を読む、というより本に囲まれているのが好きなので、私たちのアパートが広かったら、これを全部、床から天上までの大きな本棚に入れて、1つでは入りきれないから5つぐらいの本棚で、半分図書館みたいな感じの書斎に座ってみたい(笑)。ま、そうはいかないので、これから本のバイヤーを探します。

さて、きのうのバイヤーはお酒にも興味を示し、20年以上も封印されたまま飲まずに戸棚に仕舞われていたウィスキーやリキュールを全部持って行きました。1つは1986年の封印のあるウィスキーです。きっとまろやかで美味しいことでしょう。私はウィスキーは飲みません。相棒が飲みますが、私たちの家にも古いウィスキーがあって飲みきれないので要らないのです。

売却したものは全部まとめても二束三文でした。義母が生きていたら悲しむところでした。義母が亡くなってからも、部屋が片付くまで家賃を払い続けていますので、私たちにとってはアパートが少し片付いたことの方がありがたいです。