ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

Pippinさんへ ② マルコビッチ

>マルコビッチは、決してハンサムではないですよね?だけど、何か吸い寄せられる、不思議なパワーがある俳優さんです。まだ若いじゃないですか?59才だそうです>
アハ、マルコビッチの年齢のことは考えませんでした。私より4つも若いんだ。実はマルコビッチの出ている映画殆ど観てないものが多いのです(笑)。7、80本の中で映画館へ行って観たものはThe Killing Fields、In the Line of Fire、Con Air 、Being John Malkovich、TVでたまたま観たものがEmpire of the Sun、Of Mice and Men、The Man in the Iron Mask、Ripley’s Gameぐらいなのです。

マルコビッチに注目したのはIn the Line of Fireでした。彼のキャラクターが活かされています。あと彼が活かされているのはRepleyぐらいかな。他の作品は彼でなくてもいいと思うようなものばかり。誰かがマルコビッチのために脚本を書く必要があります(笑)。

マルコビッチは俳優としてより私生活でのアンバランスな本人のキャラクターが私にとって魅力なのです。イタチのような狡猾な目付きなのに、物凄くソフトな喋り方をする。その意外性にハレハレハレっとずっこけてしまうのです。だいたいフランス語が上手すぎます(笑)。たまたま彼がフランスのTV番組でインタビューされているのを見たのですが、あの顔に似合わない落ち着いた優しい声で、フランス語で何か喋っていました。何を喋っているのか分からなかったので、かっこよく見えました。っと思えば、一度憤慨すると止らない。最初は静かに話していても、空港のセキュリティの嫌がらせに腹を立て、凄い剣幕で喧嘩もする。そういうところは、あのイタチの目付きとピタリと合います(笑)。

さてまだ「耳だこ」の出来ていないPippinさんにお話します。十数年前、私がマンハッタン東のコンドに住んでいた頃のことです。外出しようとアパートの入口へ出た私の目の前にマルコビッチが突っ立っていたのです。携帯で何か話していました。

当時マルコビッチはフランスに住んでいて、欧州や英国の左派連中をケチョンケチョンに貶す発言をしていました。それが嬉しくて、私はマルコビッチを好きになり始めていた頃だったのです。Being John Malkovichを観た後でしたし、更にその日もマルコビッチの発言をウェブ上で読んでいた時でしたので、私の驚きは普通でなく、目と口を大きく開けてミーハーのように興奮してしまいました(声は出していません)。マルコビッチは、太っちょのおばさんの興奮振りが普通でないので、電話をしながらジリジリと下がって行きました。

私は電話が終るのを待って「左派を批判することに感激しています」と言いたかったのですが、なかなか電話は終りません。そればかりか、電話をしながら離れて行くのです。どうも私を恐がって(笑)いるようでした。その時のマルコビッチは減量したのかとても痩せていてスクリーンでみるような大きな人に見えません。とても小柄にみえました。通りすがりの老夫婦がお互いの顔を見合わせて小声で「マルコビッチだ」と言いながら、すまして通り過ぎて行きました。マンハッタンでは、私のように興奮するのは田舎モノなのです。ダメなのです。でも俳優だから興奮したのではなく、俳優なのに左派を批判する希少な人だから興奮したのですが、どちらにしろ興奮するのはいけませんでした。

携帯を耳に当てたまま、私の方を時々振り返りながら歩いて逃げていくマルコビッチを目で追っていた私は、その様子からマルコビッチが誰かのアパートを訪ねていく途中で、通りの向こうにある高級コンドとこちらの私の住む安コンドを間違えたのだと推察できました。携帯を耳に当てたままなのは、その会う人と住所を確かめながら歩いているからのようでした。しかし、私の意思を伝えることが出来なくて残念だったなぁ(笑)。マルコビッチ、フランスの税金の高さに憤慨して、今はマサチューセッツに住んでいるらしいです。