孫邦俊さんご一家

YouTubeで日本兵を50年近くも世話していた中国の一家、孫さんの家族のことを知りました。もう4年ほど前に日本のTV番組で紹介されたらしいのですが、私は昨日たまたまYouTubeで何気なしに観ていて、この孫さん一家のことを知りました。もう涙が出て止まりません。出かけるところだったので化粧をしていたのですが、目を拭いたり鼻をかんだりしていたら落ちてしまいました(笑)。

河南省南召県の南陽市に住む孫邦俊さん一家が、戦後まもなく、耳の後ろに弾丸を撃たれ記憶を失い聾唖になってしまった日本残兵を見つけ、日本の家族の元に戻そうと世話を始めます。そして孫邦俊さんが亡くなった後も息子さんの孫保傑さんが父親の意思を継いで最後まで責任を全うするという話なのです。

村人にお金を借りてまで日本兵の病気の治療費に充てたり、日本兵を擁護しているということで息子が進学を断られたり、家族でさえ食糧がなく糊を溶かして粥にして与えたり、そのほかの災難苦難にも日本兵を責めず、家族のようにして耐えて生きてきたご家族にはもう頭が上がりません。

どうにも堪らなく私自身を責め立てることは「敵兵であることへの偏見もなく、相手が聾唖で障害者で家族の負担にしかならないことも承知で世話をするという心」を私はとうてい持てないということです。孫さん一家に学ぶことはあまりに深く崇高で、とても私には真似のできないことでした。

自分を犠牲にしても相手を思いやる気持を持つ人間、気持だけでなく実践できる人間とはどういう風にして出来上がるのでしょうか? あまりに俗人の私にはそこまで到達することが不可能としか思われず、そのような精神がどのようにして培われるのか、知りたくてなりません。

中国の南陽市に行き、孫さんの村の文化に接すれば何か分かるのなら、これから無理してでも訪れてみたいです。諸葛孔明の生まれ育ったところと聞きます。それなら三国志を読めば何か分かるでしょうか。三国志は子供の頃読みました。内容はすっかり忘れてしまいましたが、武将の精神や戦略などがとても面白かったように憶えています。また読み直してみようかと思います。何しろ、ワタクシ、この孫邦俊さんのことが今心にささっている最中です。

この日本兵は四十余年の後、石田東四郎さんであることが確認されます。東四郎さんは記憶を無くした上、脳に障害を受けたらしく、周りの状況が理解できず孫さん一家の善意に特別な感情もなく、まるで家族と過ごすように当たり前に暮らしてきたようでした。孫さんたちはそんな東四郎さんに見返りを期待するでもなく、ただ日本の家族の元へ返したい一心だった父親邦俊さんの精神を受け継いで世話を続け、家族探しに時間を費やし続けていました。孫さん一家のお孫(まご)さんたちも東四郎さんの足をさすったりして、まるでお祖父さんの世話をするように一緒に暮らしていたようです。

東四郎さんを日本の家族に渡した数年後、孫保傑さんが再び日本を訪れると、東四郎さんは養老院に入っていたそうです。そして孫さんが帰ろうとすると一緒に帰ろうとする東四郎さんをみて保傑さんは涙が止まらなかったそうです。東四郎さんにとっては、すぐ養老院にいれてしまう日本の血の繋がった家族より、家族同様に世話して一緒に暮らしてくれた孫さん一家を離れる方がずっと辛かったのかも知れません。皮肉なものです。