ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

いい加減な人生

先々週から今週はじめにかけて相棒の背広の裏地を直していました。

相棒は背広をクリーニング屋に出す頻度が高いので、ドライクリーニングであっても薄い裏地が少しずつ縮んで、だんだん表のウール地を引っ張るようになっていました。そのことに気が付いたのは数ヶ月前でした。相棒の出掛けの姿をみたら、後ろのベンツ(スリット)の部分が攣れているのです。

独身時代の長かった相棒は、普段着や下着や靴下については私に任せてくれますが、勤務用のシャツと背広についてはいまだに毎週自分でクリーニング屋に持って行き、自分で取りに行かないと気が済みません。ところが、昔は背広姿もピシッと高級感のあった相棒でしたが、今は体重も増え白髪も増え視力が衰えはじめて、背広の後ろまでチェックすることがなくなったようで、昔の面影ありません(笑)。

相棒が「後ろの攣れ」を直して貰うためクリーニング屋に出しましたが、いい加減な直し方で、少しも攣れがとれていませんでした。お金を取って直したフリをするなんて酷い商売をするものだと憤慨した私は、自分で直すことにしました。たまたまカーテン生地の色が裏地に似ていたので、それで丈を継ぎ足して、単純な直し方でしたが、細かい手縫いで済ませました。

先々週のこと、今度は別の背広が同じ攣れをみせるようになりました。今度も簡単に丈を足せばいいと思った私は、これも自分で直すことにしました。

ところが、今回はなにやら複雑でした。丈だけ出してもまだ攣れるのです。身幅も出さねばならないことが分かりました。手探りで攣れる部分を見ていくうちに、背中の中心の糸目をバリバリと中程まで解いてしまいました。それを見て、手縫いでは無理なようで、なにやら案外手間がかかりそうな感じがしてきて、急にやる気をなくし(笑)、そのままクロゼットの取手にぶら下げて置きました。

先週明けの朝、普段は優しい相棒ですが業を煮やしたのか「明日この背広を着たいから直しておいてね」と取手にぶら下がりっぱなしの背広を指差して言うのです。「ホイ、いけねぇ」と思った私は早速ミシンを出してきました。ところが、しばらく使っていなかったため、針が曲がったり折れたりしていて使えるものは1本もなかったことを忘れていました。この小型ミシン、やたらとボビンケースが絡まったり針が折れたりするのです。手芸品小物屋がほどんど消えてなくなってしまったアップタウンではミシン針はなかなか手に入りません。仕方なく、地下鉄に乗ってミッドタウンのファッション街まで出かけて行きました。8番街の38丁目界隈は手芸品の店が軒並みにあるのです。

他にも買物しなければならないものがあり、まずBedBath&Beyondでビタミンやら頭髪リンスやらペーパータオルやらを買い込み、重い荷物をぶら下げてファッション街へ向かいました。地下鉄のホームへ入ると蒸れたトイレのような臭いがして気分が悪くなります。ところが、どこからか、とってもステキな吹奏楽が聞こえてきました。音のする方へ行ってみると、若い男性5人がトランペットを吹いていました。とても楽しく良い音でした。「トイレの臭い」と「楽しい音楽」、ニューヨークらしい組合せです。

何とかミシン針を買ってきてミシンで直し始めましたが、裁縫など無知な私が背中の途中から身幅を足したので、何ともブザマなことになり、裾にきて裏地の幅が余り、縫い付けるに付けられず、余ったままにしてしまいました。

後でウェブで調べたら、身幅は3つ(前身ごろ、後ろ身ごろ、脇)に分かれていて、背中でなく脇の身幅を足して出せばよかったと分かりましたが、もうやり直すのは面倒くさくなってます(笑)。昔から、何をしてもいい加減な人間で、いい加減にやって、それで上手く行く時もたまにあるので、このいい加減さは治りません。あー、クタブレタ...。