ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

 ニューヨークで会った天使

今週末、夜、ビレッジまで映画を観に行った時のことです。9時40分の開演までに時間があったのでその辺を散歩していました。すると相棒が片方のコンタクトレンズを落としてしまいました。あたりは薄暗くなっていたので小さな懐中電灯を点けて足元を探してみました。

一応、相棒の上着やシャツもチェックしてみましたがありません。それでまた足元のあたり60センチ四方を探してみました。10分か20分ぐらいそんなことしていたと思います。みな私たちを通り過ぎて行ったのですが、後ろの方から若い女性の声がしました。「何を探しているんですか?」

振り返ると、まだ学生のようなカップルが立っていました。コンタクトレンズを落としたことを告げると、カップルは携帯の明かりで一緒になって探してくれるのです。私は「いいんですよ、ありがとう」と言ったのですが、それでも探してくれています。若いのに他人のことにこんなに親切になれるなんて、と私は感動してしまいました。そして鉄のグリッドの上に私が明かりを当てた時、若い女の子が「アッ、見つけた!」と言うので、そこに明かりを当てると、透明なソフトレンズが丸まってありました。「さわってもいいですか?」と女の子がいうので「プリーズ」と言うと、細い指で丸まったものを取上げてくれました。私はコンタクトレンズのことはまったく無知なのでソフトレンズが丸まってしまうことなど知りませんでした。その女の子はそれを知っていたようです。

見つからないだろうと思いながら探していたので、見つけてもらった喜びより驚きの方が大きかったです。そして何度もお礼をいいました。私は自分の歯が抜けているのを隠すのも忘れていたのです。カップルがちょっと驚いたような顔をしたのはきっと歯抜けババの口元を見たからかも知れません。でも、そんなことはどうでも構わないのです。この若いカップルが天使に思えてしまいました。相棒の両親が「すまんが、ちょっと行って探してやってくれや」と地上に送ってくれたのかも知れません。

NY大(私大)のキャンパスの辺りだったので、学生かなとも思うのですが、NY大はかなりのレフティストですから、こんな優しいカップルはいないと思うのです。多分、地方から出てきたばかりの人たちかも知れません。私に出来ることはこの二人がきっときっと幸せになるということ祈るだけでした。

今の若い人たちの最低な態度に辟易している相棒と私ですが、まだこういう魂のある若者がいることを知らされ、ホッとしました。お陰で、相棒は映画を観ることができました。でも途中からウトウトしてましたけど(笑)。