ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

週末に2本観ました

Life Itself

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4つに分かれたストーリーが興味深く繋がっていきます。時間の流れを、ややもすれば混乱してしまう交差方法で上手く表現しており、運命の繋がりの意外さが観客の興味を募らせ、脚色兼監督のストーリーテラーとしての手腕を感じました。

私が特に気に入ったのはスペインにおけるエピソード。南欧の美しいオリーブ畑と館(やかた)の雰囲気もよく、二人の男優のセリフが粋で、演技も冴えていました。アントニオ・バンデラスが真面目な雰囲気を出せる役者であったことに少し驚きました。もう一人の男優はスパニッシュ・インディオの顔付が役にピッタリで、無言の目付きが素晴らしかったです。

この作品に対する米国の巷の評価は非常に低く、私と意見を異にします。私ならオスカー作品賞の候補に推します。

[後記:2019年1月の時点で、ある米国雑誌のワースト映画リストで’この作品が2位になっていました。センチメンタル過ぎというのが理由ですが、安っぽいセンチメンタルな作品はゴマンとあるのに、なぜこの作品だけが突かれるのか、映画界で村八分的なことが起きてる気がします。ま、私は、興味ある作品は他の評価は無視して観ますけど。]

 

El último traje (the last suit)

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戦後ポーランドから逃れアルゼンチンで暮らしていたホロコースト生残りの男性が、70年以上も前に助けてくれた人に逢いにポーランドのLodzまで旅します。

88歳になり足の悪い男性にはかなり苦しい旅です。アルゼンチン-スペインーフランス-ドイツ-ポーランドまで、旅の途中で言葉の支障や災難などに遭遇しながらも、持ち前のチャーミングな会話で人から助けられ、何とか目的地へ向かいます。目的地はLodz。私事ですが、相棒の父方の祖父母の故郷でもあるので、相棒は身近に感じて興味深く見入っていました。

戦中、真面目に暮らしているのに、ユダヤ人というだけでナチスやナチスを支援するポーランド人に家や財産を略奪され、目の前で家族を撃ち殺され、収容所で働かされる...そんな様子が老人の口から端的に語られるシーンは、ホロコーストを知らない人には胸に刺さるものがないかも知れませんが、ワタシャもう涙ポロポロ見てました。

「ホロコーストなどなかった」と言う人がいる今の時代、お涙頂戴の陳腐な作品だと思う人もいるかも知れません。しかし、ホロコーストを身近に感じる人にはそうは思えない作品です。主演の役者もいい演技を見せてくれて、なかなかの佳作だと思います。館内の観客は私たち2人とあと3人ほどでした。ホロコーストの悲惨さも、生残りが亡くなっていく中、忘れさられていくのでしょう。残念ではありますが、私たちは消えていく年代になったのだと思います。