ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

老婆の訪問

私たちが住むアパートは、メールボックスの数からすると400戸以上あります。消極的で内向性である相棒と私はアパートの住人とのお付き合いはありません。ドアマンやポーターたちとも挨拶以外の個人的な話をすることはめったにありません。

ある日、エレベーターに乗るとそこにいた人が『ハーイ』と挨拶するのです。分からないまま挨拶を返すと、その人も私と同じ階で降りたのです。しまった、隣の人か、と焦りました(笑)。

そんな私と相棒で、ドアのベルを鳴らすのはビルのメンテナンスマン(修理工)ぐらいなものでした。ところが昨日の日曜日、よる8時頃ドアベルが鳴りました。日曜日はメンテナンスマンも休みです。何だかドキッとしました。相棒が出てみると、同じフロアに住む老婆が『胃の飲み薬はないかね』と訊くのです。私が探してい間、部屋に入って来た老婆は寝巻姿でした。飲み薬があったのでそれを渡すと、老婆はまた、何とかいう、これも甘い飲み薬で寝付きをよくする薬はないか、と訊くのです。それはない、と応えると『あんたたちは、よく眠れるから使わないんだね』と、まるで長いこと付きあってる友人のように話すのです。

老婆が帰った後、何か狐につままれたような気持になりました。老婆は一人で暮らしていると言っていました。このアパートにも一人暮らしの老人がたくさんいるようです。相棒の母親も私の母親も今は一人暮らしです。昨夜の老婆の訪問は、(神様が)何か私に告げようとしているのかな、などと思い始めました。

今朝、ドアを開けると、そこに飲み薬が置いてありました。老婆があとで返しに来て、ドアベルを鳴らすことは遠慮したのでしょう。