ユタ州南部の日常

ユタ州南部での隠居生活

ジョージの流れ星

このブログは全て私事のようなものではありますが、さらにまた私事なることを記しておきたいのでご了承ください。旅の途中で訃報にあってしまいました。

数日アタカマ砂漠で砂ぼこりになっていたクリスマスの頃、宿に戻ってWiFiを使うことが出来た相棒が、銀行口座をチェックしていていたようです。ところが記憶にない金額が請求されていたので焦り始めました。銀行にEメールして身に覚えがない額があることを伝えたあとでも相棒は落ち着かない様子でした。

そしてそのあと相棒がEメールをみていて「な、なにぃ!?」と叫んだので、私は銀行口座で何か悪い事があったのかとドキッとしました。しかし、その後に続いた相棒の言葉は信じられないものでした。「ジョージが死んだ」と言うのです。

相棒とジョージは40年来の友人。そしてジョージは心から相棒を親愛していました。私たちが結婚する時 Witness (結婚をするのに必要な証人)として立ち会ってくれた人でもあります。ジョージに証人を頼んだ日、一緒に裁判所に来たはずの彼が、私たちの式の順番が回ってきてもどこかへ行ってしまってなかなか来ないのでどうしたのかと思っていました。その日、ジョージは片腕の骨を折って石膏を嵌めていて、裁判所のチェックポイントを通るのに上着を脱ぐように言われて、とても時間がかかり苦労していたらしいのですが、私たちはそれに気が付かずにいたのです。そんな状態でも喜んで証人になることを引き受けてくれたジョージでした。

ある時ジョージが私にこう言ったことがあります。「僕が君を好きなのは、君が『相棒』を幸せな気持にしてくれるからだよ。僕は『相棒』が本当に大好きなんだ」彼の様子の真摯なことに胸打たれたものでした。相棒には数人の友人がいますが、皆相棒を信頼し親愛しています。相棒にはそれだけの稀有なものがあります。

ジョージはお酒とタバコの量が多い人でした。仕事の責任を一人で背負いストレスが大きかったのだと思います。相棒はいつも医者へ行くよう勧めていたのですが、ジョージは自分に考えがあったのか、なかなか行こうとしませんでした。最後の最後になって医者に行った時はもう手遅れだったようです。その手遅れであることを誰にも言わずにいたジョージでした。

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ふと気が付いたことがありました。アタカマ砂漠で夜ごと星を眺めていた私たちです。その時はジョージが逝ったことを知らなかったのですが、逝った次の夜だろうと思います、相棒と私は流れ星を見たのです。東の夜空を上から下へシューッと輝きながら消えていきました。あんなにハッキリと流れ星をみたのは私は初めてでした。あれはジョージが別れの挨拶をしていたのかな、とあとで思いました。Jorge, RIP